事故を避けるために

急性硬膜下血腫は、いったん頭部外傷が起こると止められないことがあります。事故を起こさないためには、何よりも相手の頭を程度の強弱に関わらず打たせないように細心の注意を払うことです。頚部損傷も同様です。
過去に事故を起こした人は、人の命や将来の可能性を奪った悔悟の念に苛まれているばかりでなく、それが大学なら、大学の部を休部に追い込み、大学、師範などを裁判に巻き込み、部員やOB会を損害賠償に奔走させるような事態を招いています。
そのため、軽度でも受けの人が頭を打った場合、投げが例え先輩であっても気兼ねせず直ぐに申し出て、稽古を休んで、経過を観察して下さい(受傷後6時間~12時間たってから発症することもありますので、稽古の後も下宿で一人にしておかないで下さい。)。また、稽古の途中で頭痛などの異常を覚えた場合、軽くても頭を打った覚えがあれば(2~3日前のことであっても)、稽古を続けないで検査を受けて下さい。

急性硬膜下血腫(硬膜外血腫、脳内血腫なども含む)は、受身の際に頭を畳に打ちつけることにより発生しますが、投げられた他の人の腰や足が頭部に当たる衝突事故によっても起こっています。道場が過密状態の場合、投げの足元にしゃがみこむような受身をとって、他の人に当たらないようにする他、次のような練習形式を取って互いの衝突が起こらないように心掛けて下さい。

1) 道場の混み具合に関係なく、常時、稽古生は各組とも平行に並び、相手をそれぞれ同方向に投げる。

2) 三人一組のグループに分ける。3番目の人は投げの順番がくるまで、他の二人が技をやっている間、「交通係り」となって、他の組みとの安全な間隔を常に確認する。

3) 「掛かり稽古」方式にして、取りの前に受けをやる人たちが一列に並ぶ。取りは受けを一人ずつ投げていき、取りは順次交替する。

4) さらに過密状態の場合は、稽古生を二つのグループに分け、交替で稽古をさせる。

急性硬膜下血腫発生後の処置

急性硬膜下血腫は比較的速く進行します。頭蓋内出血による頭蓋内圧(脳の圧迫)の急激な上昇は制御できないので、迅速な治療を施しても死亡率が高いものです。とにかく急いで救急車の手配をします。
意識障害に至らなくても、次のような症状が見られたら緊急を要します。

– てんかん発作
– 呼吸障害
– 目、不同瞳孔(片方の瞳孔が大きい)
– 脱力感
– 麻痺-完全または一部(身体の片側または両側)
– 感覚の変化、身体の一部
– 発語困難
– 嚥下障害
– 視力の変化
– 眼疼痛

幸いにして命が助かっても、植物人間状態になったり、てんかん発作のような症状が治療後数ヶ月以上も持続することがあります。てんかん発作は、外傷を受けてから2年もたってから始まることもあります。
軽度の場合でも、大人の場合、やや回復するのに約6ヶ月、ほとんど回復するまでには約2年かかります。回復が不完全だと、持続的な脳損傷が残ります。

急性硬膜下血腫による症状

脳震盪の場合は、架橋静脈の破綻がなく、脳が揺り動かされるために起こる一過性の意識障害(失神)や記憶喪失(事故に遭ったことを憶えていない)を引き起こします。
急性硬膜下血腫の場合は、次のような症状が発現します。出血量が少ない急性硬膜下血腫の初期は、これらの症状がまったく発現していないことがありますが、CTスキャンやMRIで診断すると確認できます。

– 一定時間意識を取り戻さない、あるいは取り戻すこともある
– 受傷直後の意識障害から一部回復したり、一旦回復してもふたたび意識が悪化する (専門用語では意識半清明期)
– 昏睡状態(いびきをかく)
– 嗜眠(しみん)状態(強い刺激を与えないと覚醒し反応しない)
– 頭痛
– 眩暈(めまい)
– 吐き気、嘔吐
– 視力減退、視力喪失(失明)
– 目が眼窩に引っ込む(眼球陥入症)
– 片目(片側)のみの眼瞼下垂
– 感覚の低下またはしびれ
– 下肢(右脚又は左脚)又は上肢(右腕又は左腕)の感覚麻痺またはしびれ
– 顔(顔の右側又は顔の左側)の感覚麻痺またはしびれ
– 受傷者が感じる能力が減退したことを自覚する(感覚欠落)
– 感覚が減退した側は周囲に対し不注意になる
– 運動の喪失(麻痺)、ふらつき
– 身体の片側だけの麻痺
– 患者が運動障害を自覚する(運動欠落)
– 錯乱、せんもう(軽度ないし中度の意識混濁があり、妄覚と精神的な興奮を伴う状態)
– 人格の変化
– 興奮性
– 無関心
– 記憶減退
– 思考過程が遅い
– 会話または言語の障害
– 読む能力を喪失するが、まだ会話を理解することはできる
– 言葉を反復することができない
– 不明瞭言語(構音障害)
– 言葉を話す筋肉を使うことができないが、筋肉は麻痺していない
– 発語がない、無言
– 物の名前を言う能力の障害(名辞失語症)
– 話された言葉の理解ができない
– 社会的な交流からの離脱
– 額の片側の発汗がない

急性硬膜下血腫

スノーボードの転倒やボクシングのアッパーカットによる頭部打撲によって、急性硬膜下血腫による死亡事故、後遺症事故が後を断ちません。数は少ないですが合気道においても同様の事故が発生しています。報告により幅がありますが、急性硬膜下血腫による死亡率は57~90%で、命が助かっても植物人間になる確率が非常に高く、恐いものです。

最近の研究で、この急性硬膜下血腫は頭部に直線的な加速度による衝撃を加えるよりも、回転方向の加速度を加えることによって発生することが知られるようになりました。この発生メカニズムは、スノーボードの転倒や合気道の投げによって頭部に加えられた回転が、柔らかい雪や畳に打ちつけらることにより急激に減速され、頭蓋骨と一緒に回転が止まる硬膜と慣性モーメントによって脳と一緒に回転し続けるくも膜との間でズレが生じることによるものです。すなわち、この時に硬膜とくも膜を架橋している静脈が伸長されて破綻(断裂)し、硬膜下腔で出血するために発生するものです。ボクシングのアッパーカットの場合は、逆に静止し続けようとするくも膜(脳)と回転加速度を加えられた硬膜(頭蓋骨)との間のズレが原因になっています。柔らかい畳だからと安心できないことを認識する必要があります。

硬膜下腔に生じた血腫(血の塊)が、脳を圧迫するため、頭痛、吐き気、手足のしびれ、眩暈(めまい)などを経て意識を消失したり、いびきをかいて昏睡状態に陥ったりします。普通は、頭を打ってから数分、数時間あるいは数日と時間が経ってから発現しますが、激しい場合は、受傷直後から意識消失に至ることもあります。
頭部の回転加速度の強弱、作用する時間、あるいは与える衝撃の回数などの因子により、脳に与えられた衝撃がある一定のレベルに達すると脳震盪が発生し、更に強い条件で硬膜下血腫へと発展していくという実験デ-タ-が得られています。

合気道でも、大学で新入部員が後方反復受身の単独練習を行っていて、何百回となく繰り返すうちに自分で後頭部を畳に何度も打って急性硬膜下血腫になった例がありますので、決して強い打撲でなくても頭を打つことは避ける必要があります。意識消失や昏睡状態になった時は、脳の圧迫が進んでいて、脳の組織が壊死してしまうので、手術で血腫を除去しても命が助からないか予後不良になります。100 mlを超える出血があると死亡するといわれています。
なお、この架橋静脈の破綻は、後頭部を打撃したときには、架橋静脈の伸長度合いの大きい側頭葉や前頭葉に発生します。

脳の保護構造

人間の脳の重さは1,100~1,600 gあります。この脳の固さは豆腐ぐらいのもので、非常に柔らかく壊れやすいものです。そのために、種々の構造により厳重に保護されています。最外側には頭皮と頭蓋骨があり、その直下に硬膜、その下にくも膜と軟膜があり、これらの組織に包まれて脳が存在しています。更に、くも膜の内側には脳脊髄液が流れています。したがって、ちょうど脳は水の中に浮いた豆腐のようなものとイメージしてもよいでしょう。硬膜、くも膜、軟膜を合わせて脳髄膜と呼んでいます。

すなわち、脳を直接包んでいるのが軟膜で、軟膜は脳に密着しており、肉眼的には見えないくらい薄いものです。この軟膜は大脳をラップの様に優しく包んでいます。その上のくも膜の下には蜘蛛の網のようにネットが張り巡らされて、脳脊髄液という緩衝液が脳から脊髄を守るために流れています。そして、くも膜の上には厚さが1 mmぐらいの強くてタフな繊維性の硬膜が守るように付いていて、すぐ上の頭蓋骨にくっ付いているといった構造になっています。

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ただ今、ホームページをリニューアル中です。
少しずつですが中身を充実させていきますのでしばらくお待ちください。

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