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道歌と道文


開祖は、合気道のある一つの概念を説明するのにいろいろな違った言葉を用いられています。そのため、次のように道歌や道文を並べてじっくりと眺めていると、この概念が段々と見えて来るようになります。

●時は今 天火水地や玉の緒の 筋を正して立つぞ案内(あない)に

「すべての働きは、みな宇宙の一元(一霊、神)の経綸活力の働きであるが、天・火(△)水(○)地(□)である。心身もみなそれぞれ一元の働きである。宇宙の現象は、みな宇宙の真理なのである。合気道で宇宙の魂を磨く者は、この源をよく究めて、宇宙の真理にかない、宇宙の御心にかなうように、万有愛護の心をもって、世の中の生きとし、生けるものに喜びを与えるように接しなければならない。このことは、やがて己れに宇宙の喜びの大声に迎えられる日がくることなのである。」

* 「一霊四魂」を「天火水地」「奇御霊・荒御霊・和御霊・幸御霊」「気流柔剛」「智勇親愛」といういろいろな言葉の現しに例えている。

●火と水の 合気にくみし橋の上 大海原にいける山彦

「合気道は「天の浮橋に立たされて」ということである。天の浮橋とは、もののおこる発し兆しをいう。「あ」は自ら、「め」はめぐる。「う」は水(身)にして縦をなし、「はし」は橋にして火(霊)であり横である。天の浮橋は水火結んでめぐるということ。火は水を動かし、水は火によって動かさる。火も水も一つのものである。螺旋状にめぐる。気をもって絡むのである。それは、息によるものであり、この息が合気であります。」

「天の浮橋は、天の武産の合気の土台の発祥であります。身と心に、喰い入り、喰い込み、喰い止めて、各自自分の体全体が、天の浮橋の実在であらねばなりません。これが天の浮橋に立たすのであります。」

「わたしはいま「天の浮橋」に立ち、世界人類の大和大愛を希いつつ神楽舞い昇り、舞い降ろうと思います。」

「呼吸が右に螺旋して舞い昇り、左に螺旋して舞い降り、水火の結びを生ずる、摩擦連行作用を生ずる。水火の結びは、宇宙万有一切の様相根元をなすものであって、無量無辺である。この摩擦連行作用を生じさすことができてこそ、合気の真髄を把握することができる。」

「この火と水を名づけて合気というのです。だから全大宇宙と言うものは全部火と水にて一杯つまっている。これを合気と名づけている。まず形でいうと、この火と水の交流によって、気というものが出来る。人が呼吸しているのも、火と水の交流による。火と水が一杯つまっているから世界は動き、ものは活動する。」

* 天の浮橋は天と地をつなぐ橋(A・I・U・E・O全て含む。)。

  天の浮橋 
A・ME・NOU・KI・HA・SHI

  天(ア) 高天原    T
A・KAA・MA・HA・RA
  火(イ) 霊(心):横
  結(ウ) 産       M
U・SU
  水(エ) 身(肉体):縦
  地(オ) 淤能碁呂島 
O・NO・KO・RO 



●誠をば さらに誠に練りあげて 顕幽一如の真諦(しんたい)を知れ

「合気道とは、いいかえれば、万有万身の条理を明示するところの神示であらねばならないのである。過去−現在−未来は宇宙生命の変化の道筋で、すべて自己の体内にある。これらを澄み清めつつ顕幽神三界と和合して守り、行ってゆくものが合気道であります。」
「体を通して魂の学びを学ぶ、すべて形にとらわれてはいけない。魂(心)が魄(体)を使う。かくのごとく熱心に稽古の徳を重ねるに至らば、相手と相対した時にいまだ手を出さぬうちに、すでに相手の倒れた姿が見える。そこでその方向に技をかけると、面白く投げられる。」

●気の御わざ 赤白魂(たま)やますみ玉 合気の道は小戸の神技(おどのかむわざ)
●気のみわざ おろちの霊出(ひで)や蜂の霊出 魂(たま)の霊出ふる武産の道

「合気道は赤玉、白玉、真澄の玉であり、真澄の玉とは空気の素みたいなものです。」

「赤玉というのは塩盈珠(しおみつのたま)、白玉は塩涸珠(しおひるのたま)、真澄の玉は風の玉、風と水の御霊徳により禊の方面にもっていかなければなりません。」

「合気は、魂の比礼(霊出)振りでありますから、絶対に形のない学びであります。」

「魂の気というのは、宇宙組織の気である。造り主のことである。」

「宇宙と結ばれる武を武産の武というのである。」

「また、念を五体から宇宙に気結びすれば、五体は宇宙と一体となって、生滅を超越した宇宙の中心に立つことも出来る。これが武道の奥義である。」

* 「真澄の玉」と「魂の霊出(比礼)」は同じ概念。そうすると、「赤玉、白玉」と「おろち(地を這う蟲)の霊出、蜂(天を飛ぶ蟲)の霊出」、「小戸の神技」と「武産の道」が同じ概念。



●取りまきし 槍の林に入るときは 小盾(こだて)は己が心とぞしれ
●立ちむかふ 剣の林を導くに 小盾は敵の心とぞ知れ

「相手の気は相手にまかす。無抵抗主義には大いなる修行がいる。しかし心を結ぶには三月で足ります。」

「念は、目前の勝負にとらわれず、宇宙に正しく気結びすることにより生成する。その場合「念」は、いわゆる神通力となるのであり、森羅万象、一挙手一投足のことごとくが洞察されて明らかとなる。すなわち明鏡止水、己れは宇宙の中心に立つゆえに、中心をはずれたもの一切の挙動は看破される。これ、戦わずしてすでに勝つの真理である。」



●ふりまはすえものに目付けて何かせん 拳(こぶし)は人の切るところたれ

「相手の眼を見てはいけない、眼に心を吸収されてしまう。相手の剣を見てはいけない、剣に気が把われてしまう。相手を見てはいけない、相手に気を吸収されてしまうからだ。」



●惟神(かんながら)合気のわざを極むれば 如何なる敵も襲ふすべなし
●合気とは 解けばむつかし道なれど ありのままなる天のめぐりよ

「惟神と云う事は、天地の真象に倣うという事である。又、大自然、或いは真理のままと云う事である。」
(『水鏡』出口王仁三郎)

「合気道とは、天授の真理にして、武産の合気の妙用であります。」



●六合(りくごう)の内限りなくぞかきめぐり きよめの道は○ともちろに

「宇宙の気はすべて魂の円におさまります。おさまるがゆえに技も無限に包蔵され、生み出すこともできます。これが合気の魂の円であります。」
* 「もちろ」は「百千万(ももちよろず)」。造化の三神を表す言霊。